2012年02月21日(火)
Mimiz録音会 (2) [レポート]
2012年2月19日:膨大な量の録音物を少しずつ確認しはじめている。PC内部で録音されたものを聴いているが、実際にその場で体験してきたものとはまったく違う様子でもあり新鮮さとどこか居心地の悪いものも同居した質感がある。
この録音の向こうにある生身の世界に数日前には身を置いていたのだ。その生身の世界から入力された限定された情報の音を、PC内部で静的に録音されたものを、今、聴き、
限定された情報とそれ故高まるざるを得ない情報の純度に感じるものがある。
SNSなど、インターネットを通して情報の共有が容易になって来ている。遠方に住む親友の一言などを読めば伺い知れるものもあり、全くの音信不通よりは、元気な言葉であれば、こちらも嬉しい事が多い。でもこれが如何に限られた情報であるかを忘れてしまう瞬間もなくはない。この限定された情報というのは否応なく純度の高い情報であり、補完する他の情報が得られなければそのまま否定的にも肯定的にも扱われる部類のものであると感じている。
PC内部の録音と外部、つまり生身の人間の対峙する場"ここ"、との対比にまずは意識的でありたいと思った。
【上映会】
前田真二郎さんのプロジェクト“BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW”(以下BYTと略)は撮影/編集方法における明確な指示書が提示されているうえで制作された映像作品だ。今回は22名の作家がその指示書に従って製作したBYT作品をオムニバス上映という形で上映された。1作品5分という時間の制約や、撮影日前後の日に録音された作家本人による語りなど特徴的な構造がある。撮影時期も大きく4つの時期に区切られており、その内、3つの時期のものに関しては現在もネット上で公開されている。今回の上映で初公開となるものは3作品だった。
《“BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW” Omnibus 2011-12》
総勢22名となればどのような多様さが生まれるかと思えば、内容は確かに多様である。しかし、指示書による制約が一本の支柱となっているために、想像以上のブレはなく、かえって作家が重視した視点の純度が高まっている。そして、どの作品もその制約の中で一定の水準以上と思われる何かをしのばせているのは確かだった。また、ネット視聴とは明らかに違う、という印象は確かに感じられた。
ひとつひとつの作品についてあれこれ感想を言いはじめたらきりがない。それだけ語るべき視点が花火のように目の前を過ぎていく。個人的には初公開という事もあるだろうが、最後の3作品の印象が強い(速度の違いもそれぞれに全く異なっていた)。
中でも池田泰教さんの作品は決定的に異質な質感を提示していた。BYTの制約は撮影時間の限定とも繋がっており、撮影を許されているのは1日のみである。それを思えば、その1日の撮影でここまでやる事は、限りなく限界に近いのではないかと思え感じ入るものがあった。また、この作品の録音を手がけているのがウエヤマトモコさんである。両者の質へのこだわりが伝わってくるようで(こだわりという表現は不適当かもしれない、あるがままに残したいという欲求がまず強く最初にあるような気がするのだけれど。)嬉しかった。池田さんの作品は時間をおくほど印象的なシーンが浮き上がってくるような気が現在している。必要以上の説明は与えられていない、言葉を意識的に滅するように感じられるものもある。だから答えというものはないのかもしれないが、残ってくるものから関係を結ぶものは確かにありそうだ。そしてそれは時に残酷ですらある。
同時に、池田さんが音楽に憧れるという事を数日前のチャットで言っていたのを思い出す。言葉を滅しられた映像は確かに音楽的な方向へ向かうかもしれない。ただ、同様な地点を音楽ができるのかと問うと、、僕は音楽に関わるものとして自分を戒めたい気持ちになる。
飛躍的な言い方だけれども、池田君の作品は間違いなくリニアなメディア表現において上下の関係を提示してみせていると思う。
これは言葉以上に難解な領域だ。
(僕がそのように明確に感じた音楽とは去年お寺で聴いたディーゼル・ギターの演奏のみである。)
最近、実験的に(しかも抽象的)にではあるが作品の鑑賞に際して「生命に触れる」つもりで観るという事を試している。それが何をさすのかも分からない。実際、当日はそのことについて必要以上に考えてはいなかった。ただ、現在それを意識して区分すれば、それは今回の短編を繋ぐタイトルやインターバル、エンドロールなどになると思った。その部分の強さはまれに見るもの(少なくとも自分にとって)だったし、それは様々な要因と関係しているから個人的な意見としか書きようがない。
そのとき前田真二郎さんの意思が上映空間を支配し、私はそれに同意し、身を置いたのだと思う。
【上映後】
上映後の流れは濱地潤一さんのブログに詳しい。
http://d.hatena.ne.jp/hamajijune/20120218
ウエヤマトモコさん、作曲家の桑原ゆうさん、濱地潤一さん、飛谷謙介くん、僕の5人で近くのバールで飲んで、そのあとは桑原さんとは解散し、前田真二郎さん、高嶺格さん達と合流した。高嶺さんは以前ビデオカメラを多く持って身の回りを記録しているというような印象があったので、記録について聞いてみた。今はほとんど記録していないという。膨大な量の記録物とどう向き合うかというところでつきまとう困難は多い。
その後、濱地潤一さんと二人で神奈川の関内に移動、お互いのホテルにチェックインを済ませたあと再び合流して、深夜まで話し込んだ。ここでも会話の一部は録音した。
多分、記録に取り憑かれているのだ。
+
ホテルに戻り、濱地潤一さんからの《変容の対象》を確認し、この日撮った写真の一部を現像してMimizのブログにアップ(http://www.mimiz.org/index.php?ID=748)して5時台に就寝。
+
>>(3) http://www.mimiz.org/index.php?ID=751
Posted by shimaf at 15時48分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2012年02月20日(月)
Mimiz録音会 (1) [レポート]
+
2012年2月18日の早朝、夜行バスは少し遅れて新潟駅に到着。雪と風がひどく地吹雪が舞っていた。この光景をみんなに見せたいなと思った、笑ってくれるに違いない。
駅の掲示板には、除雪作業難航のため運休の文字がならんでいた。6時40分頃の電車が今日の始発になるようだったので、それまで近くのファミレスで待つことにした。約一時間、データの移動をしたり、膨大な録音データをパソコン内で整理したりした。
思えば今回の東京ではかなりの記録/録音を行った。スタジオではエアーで録音する機材とPCの内部で録音するものをほとんど常時回していた。加えて、スタジオ以外での会話もかなり録音しているし、写真も多く撮った。あまりスマートではないが、何かに捕われているということはこういう事なのかもしれない。。
16日17日はMimizの録音会だった。
+
今年、Mimizの鈴木悦久さんがドイツから帰国された。それを期に久しぶりにMimizでセッションをしようというのが今回の大きな目的だった。2月頃にしようと日付を調整する中で、16日には恵比寿の映画祭で前田真二郎さんのプロジェクトであるBYTの上映会があることを知り、スケジュールはその前後にしようと決めた。運良く、飛谷くん、濱地さんの調整もつき今回を向えることができた。
+[池袋着]
2012年1月15日の夜、夜行バスで東京へ向かう。バスではいつもは苦もなく寝ていけるほうだけれど、この日は椅子の形と相性が悪く上手く寝ることができなかった。ウトウトして起きると首や肩が悲鳴を上げた。
16日の4時30分頃に池袋へ到着。ネットカフェでハードディスクの整理を進めながら濱地潤一さんのブログを観るとまだ起きていると書かれていた(http://d.hatena.ne.jp/hamajijune/20120215)のでMimizのブログを少し更新して(http://www.mimiz.org/index.php?ID=747)1時間弱仮眠してから横浜へ向った。
+[スタジオ1日目]
8時半にみなとみらい駅に到着する予定が、電車の送電トラブルなど重なって遅刻、鈴木さんを待たせてしまう。到着し、遅刻を謝罪し、再会を喜んだ。飛谷くんは10時ごろ合流の予定だからとりあえずスタジオに移動。演奏のための部屋のセッティングをする。飛谷くんが来るまでは少し時間があったので、どうします、少し音出しますか、と聞くと鈴木さんは「いや、待とうか。二人で先にあったまっちゃうと悪いから」。
3人できちんとセッションをしたのは2010年5月29日のLoopline以来だった(http://www.mimiz.org/index.php?ID=399&cID=8)。それでなんとなく、僕自身もそのときに使用したMimizのプログラムを使用するところから始めようと決めていた。
いよいよ飛谷くんが合流し、セッション開始。この日はお昼の12時撤収だったので残り90分というところ、休憩含めて2,3回セッションをした。思いのほか早くMimizとして演奏する感覚は戻って来たように感じたし、やはり個人で出す音とは全く異なる事にささやかな喜びを覚えた。二人ともこの日はミキサーのハウリングのみによって音を出す事に集中していて、具体音の入らない音響のみでセッションするという事が中心になった。実はこのアプローチはMimizとしてはあまりやってこなかった。3人ともこれだけ抽象的な音を扱っても充分な対話が成り立ち得るというある種の確信を強めたが、でもこれ聴いている人にはどれだけ分かるのかね?といって笑いあったりした。分かる人には分かるはずなんですけどね。
+[恵比寿映画祭]
お昼をMimizの3人で食べた。
明日の予定を決めて、この日は解散。飛谷くんと僕で恵比寿へ移動する。途中、濱地さんから連絡を受ける。渋谷駅で急いで乗り換えたら僕だけ乗り遅れた。ぎりぎり乗り込んだ飛谷くんとお互い苦笑い。しばし別れる。濱地さんへ「飛谷くんが先に恵比寿に向いました。」とメールする。
写真美術館へ到着。ロビーの端で打ち合わせをされていた前田真二郎さんへ軽く会釈しつつ奥へ。濱地潤一さんが何やら読書されているのを発見し、挨拶、再会を喜ぶ。
上映会直前にウエヤマトモコさんも合流。大変に嬉しい。最近、濱地潤一さんが話題にされていたウエヤマトモコさんの音楽作品も頂戴する。大切に聴かせていただきます。
+
>>(2) http://www.mimiz.org/index.php?ID=750
Posted by shimaf at 00時29分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 4 )
2012年02月17日(金)
120216 [《変容の対象》]
Posted by shimaf at 04時40分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2012年02月16日(木)
120215-16 [《変容の対象》]
Posted by shimaf at 05時12分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2012年02月14日(火)
120216-17 [告知関係です。]
2012年2月16-17日と東京へ行く。
Mimizの久々のセッションと録音が目的です。17日は和歌山から濱地潤一をお迎えして試行錯誤しようと思っています。それぞれ気合いが入っている様子も伝わってきて気を引き締めています。
また、16日の午後は東京都写真美術館の恵比寿映画祭に足を運ぶ予定です。
iamas時代からの同期/仲間の作品も多く含まれていることもありますし、そもそも映像作家の前田真二郎さんのプロジェクトでもあります。
池田泰教さんのものは新作とのこと。こちらも楽しみです。
+++以下、転記させてもらいます。+++
“BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW” Omnibus 2011-12
日時:2012年 2月16日(木)、21日(火)
場所:東京都写真美術館
2011年4月からネット公開された第一期、8月31日/9月11日に複数の作家が撮影した第二期、そして最新作から構成されるオムニバス・プログラム。高嶺格、大木裕之、池田泰教の新作を含む、22作品のオムニバスが上映されます。
http://www.yebizo.com/#pg_screen11
http://maedashinjiro.jp/byt/
Posted by shimaf at 09時06分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
【 過去の記事へ 】