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2013年03月08日(金)

《BUNDLE IMPACTOR》('13) [レポート]

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BUNDLE IMPACTOR('13)の初演を終えて。

クラリネット2本とオーボエ、そしてアルトサックスでの編成でいつか曲を書いてみたい、と思ったのは随分前のことでした。濱地さんに可能性のひとつとしてお話していたのは、砂丘館での発表の話をいただいた頃だから、丁度1年前くらいだと思います。この着想は、これまでの濱地潤一さんとの関係抜きには考えられず、また2年前(2011年)の《フロリゲン・ユニット》を初演した経験も大きく関係しています。だから、自然と奏者は《フロリゲン・ユニット》の初演メンバーと濱地潤一さんを想定して考えるようになっていました。
《フロリゲン・ユニット》のメンバーは五線譜の指示に対して極めて忠実に再現できる奏者達です。楽譜の指定に対して特にテンポ設定など大きな揺れもなく演奏することができるのは、西洋音楽の中では当たり前なのかもしれないけれど、特殊な才能のようにも思います。濱地潤一さんとは、2008年からの付き合いで、セッションや対話を通してその間合いやアプローチに、それは記譜するのには幾分難しい領域までも含まれていますが、そこにとても共感を感じて来ました。この両者の魅力的な技能は、音楽的に根本では繋がっていると確信はあるものの、入り口が少し異なっているようにも感じて来ました。

今年の1月8日までにこの編成での曲名を《BUNDLE IMPACTOR》と決めました。初演まで2ヶ月前のことです。IMPACTORは大気中のエアロゾルを採取するために使用するサンプリング方法のひとつで、慣性衝突をうまく利用している点、その説明にとても納得、あるいは魅力のようものを感じていました。音楽とは直接関係はないものの、その構造の明瞭さに引き付けられるところがあり、どこか、エアロゾルの採取と不確定な音の採取というイメージがオーバーラップして見えるような気がしました。bundleには束の意味もあることから、何か似て非なるものを2つ束ねるような関係が楽曲の成立に大きく関わるような仕組みを考えたいと採用しました。これは余談ですが、植物に関する言葉としてbundleは維管束の意味にもなるそうです。

曲名を《BUNDLE IMPACTOR》と決めましたと濱地潤一さんに真っ先に報告すると、どこか強そうなそのタイトルを微笑み飛ばしてくれるような様子で返信が帰って来ました。クラリネットとオーボエのセクションとサックスのセクションは別の世界として扱いたいことはもう随分前から決めていたので、それに変更ないこともお伝えしました。この時点では、静的なクラリネットとオーボエのセクションに対して、激しく吹かれるサックスパートがぶつかり合うような、そういうイメージを可能性として考えていたものの、初演2ヶ月前にあって、音符は一音も並んでいません。その前に、2月16日に砂丘館での《cell walls》の初演も控えていました。奏者へは早めに楽譜を送るのが当然の礼儀でありますから、少なくとも初演の一ヶ月前(2月7日)には楽譜を渡し、楽曲の全体像も報告しながら初演を待ちたいところではありましたが。

また、《cell walls》も《BUNDLE IMPACTOR》もそうですが、楽曲の成立に対しては数字の「13」あるいは「3」についての考察を何かしら含めたい、という決めごとがあります。なぜかという問いに対して、もっとも簡単な答えは今年が20"13"年だから、です。これは2002年のピアノとコンピュータのための《teo》('02)の時から続けられているささやかな約束事です(《teo》には数字02へのやや乱暴な考察が含まれている)。例えば、音楽は1オクターブに12種類の半音があり、それを適当に選んで時間軸内に配置すれば何かしらの音響は出来上がる。では、12種類の音という対象に対して13の要素を対応させるとは、どういうことを指すのか。さらに音高についてだけでなく、楽曲の構造に13の要素をどれだけ含めることができるでしょうか。その課題に対して、答えなければいけない時間はそう多くは残されていませんでした。

《cell walls》の制作過程ではっきりしたものは、素数である13を3つに分解して合計13を考えてみるということでした。《cell walls》にはリアルタイムに録音された記憶領域(buffer~)を3つに区切り、それを全体に対して6:2:5の比率で分割するということを行っています。6+2+5=13という関係。この"6"、"2"、"5"からさらに発生した3つの群を考え、楽曲の全体構成に必要なフォルムを考えていくことで、なにか今回の答えに繋がるのではないかという予感がつきまといました。

単なる数字の操作でしかない不毛な作業に対して、どれだけの意味付けをしていくのか、何をどこに関係づければなにが出来上がっていくのかがぼんやりした中で、しかし何かはっきりしそうな予感も孕んでいるから破棄するわけにもいかず、そんな日々をずっと送りました。ずっとモヤモヤ頭に置いていたものが、すっきり整理されるのは眠りから覚めた後が多く、本番までの時間も気になりましたが、あと何回寝れるのかと言うことを数えてみたりしました。端から見れば寝ずに作業したほうが良いだろうと心配されましたが、数字の関係がすっきりするまでは音を並べても納得できるはずもなく、なにも手につかず寝ては罪悪感に苛まれる日が続きました。

結局、《cell walls》の初演(2月16日)を終え、それでもなんとか数字の群もだいぶ整理され、クラリネットとオーボエのパートに音が並び終わったのが2月25日、本番まで1週間とちょっと。さらにsaxのパートを送ったのが本番1週間前という有様で大変に申し訳ないものでした。しかし、この時点ではっきりしたのは、当初直感的に正しいと思っていた、静的なアンサンブルと激しい動的な旋律との直接的な対立関係はもはや意味を失ったことで、異なる時間を同時に存在させることから生まれる必然的な拮抗関係というものが変わりに現れて来たと感じられていました。そうした拮抗状態を聴き手は上手く両方同時に把握していくことが実は難しく、どちらか一方、もしくはどちらも一緒に聴くしかないこと、ある部分ではどんなノイズよりも聴きにくい領域を扱うことになりそうだ、ということがおぼろげに感じられるようになっていました。

しかして、13番目の音、と言うのは直接的な意味では不明瞭なままでしたが、譜面をお渡しした数日後、濱地さんからこんな連絡をもらいました。「今バンドルの譜面さらっているのですがB H As A の4つの音はマルチフォニックスをかませることが可能です。ご参考に。濱地」とのこと。あぁ、重音。吹奏楽器はひと吹きに一音だけをだすのが普通ですが、特殊な奏法によって複数の音を鳴らすことが可能でもあります。ではそれを13番目の要素として扱うのはどうだろうか。マルチフォニックスを使った音のコンピュータ処理のことはこれまで濱地さんと話し合って来てもいたし、今回はそのささやかな入り口にしてみよう、という気にもなりました。
では、濱地さんの譜面にある、hの音は全てマルチフォニックスで吹いてもらうことに変更し、追加で楽曲の冒頭にはその音を三音だけロングトーンで吹いてもらうことを決めました。この冒頭の3音は、これから不確定な時間との関わりを持つことへの宣言としておく、ことに。3音の間合いの取り方は重要でしたが、簡単に濱地さんへ提案したのみでした。場の空気を正しく清めることのできる、そういう扱いを知っている方だし、その辺りへの感覚は誰よりも確かなものがあるから、意図を分かってもらえれば他になにも言うことはないのです。

本番前日の浅草でのリハーサルを行うまでは全員で集まって練習することはできません。それまでは各自練習ということにして、自分もコンピュータ処理に関しては微調整を繰り返しました。ある程度、予想される結果の範囲内における時間の構成を考えなければいけず、ある程度突き放しながらそれでも丁寧に処理が見えるようにもしたい。しかし、なんの支えもない場所で恐くなれば、必要以上にリズム処理に頼りたくもなってしまう。葛藤はぎりぎりまで結局続いてしまい。正直なところ、こういう泥沼の作業はあまりしたくないものです。

数字による関係性に注目して構成し、時間の扱いに操作を加える空の構造を作り上げたけれど、結局作曲らしいことはほとんど行っていないように感じています。でもそうでしか作れなかったし、しかしそうして結果的に聴くことのできたものは、ある結果として客観的に聴くことができました。また、今回の特異なアンサンブルでは奏者の方たちにも独特の意識の交信をもたらしたようでもありました。音楽的な引力、それに引き付けられたり離れたりというようなことが演奏中に行われていたなどと言っていたと思います。高度に訓練された奏者のみが感じることのできた領域ではないでしょうか。

ひとつ、ふたつの提案で難なく意図を理解してすばらしい初演を行ってくれた、クラリネットの伊藤めぐみ様、同じくクラリネットの櫻田はるか様、オーボエの山口裕加様、アルトサックスの濱地潤一様、改めて感謝いたします。また特に、濱地潤一さんには作曲上の助言なども含めて多くの労力を割いていただきました。本当にありがとうございました。

初演後の演奏者の方の表情を見て、ある程度の達成感を感じてもらえていることがわかり、うれしく思いました。そうしたものは一見して分かってしまうものなので、いつも見るのは恐くもあります。
また、初演には私自身聴いていただきたいと思っている方の多くに聴いていただくことができました。偶然も重なり、予想より多くの方と再会できました。
皆さんなくしてこの曲の初演はあり得ませんでした。ありがとうございました。



             福島諭。

Posted by shimaf at 06時56分   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

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Feb.05,2008、2人mimiz(suzuki+fukushima)@円盤

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