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2008年06月29日(日)

メモ、感想。増補『響きの考古学』。 [福系]

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増補『響きの考古学』 藤枝 守著
平凡社ライブラリー (2007)

 音律の歴史。
 音を律するということの原動力が、調和への渇望によって支えられてきたという長い歴史があることを感じさせてくれる名著。一方では産業システムの象徴とも言える平均律批判を穏やかに含みつつ、現代作曲家の新たな音律の挑戦も紹介され、内容は非常に明確で確信に満ちている。

[メモ]
 1オクターブを12半音で等分する平均律と言われる調律法は現在、西洋音楽にとどまらず広く一般的な音楽の基盤として定着している。それはあたかも音律の歴史の一つの終着点というほど絶対的な前提として扱われているが、ここに至るまでの音律の歴史は深い。その変遷は非常に多様で、ピタゴラス音律をはじめとして、多くの個性的な調律方法が考案されてきた。
 平均律はすべての調性に対して均質のとれた響きを提供するが、その分完全に調和のとれた響きは鳴り響かずわずかに濁る。ある調性内に限られた楽曲であれば他の音律で調律されたもののほうが澄んだ響きを生むことになる。

 ピタゴラス音律と純正調との微妙なブレンドによって作られるウエル・テンペラメントと呼ばれる方法は18世紀、バッハの時代に盛んに研究された。バッハの《平均律クラヴィーア曲集》における調律法はこのウェル・テンペラメントによるもので邦題にみられる平均律とは現在のピアノに採用されている平均律とは別のものであり、誤訳に等しい。
 その後19世紀半ば、楽器の生産という産業システムからの要請として平均律は実用化されていき、その後世界の音楽を支配していくことになる。

 1オクターブを均等に分割する平均律の「均質性」は、厳密には純正な音程をどこにも含まない。アーノルド・シェーンベルクによる12の半音すべてを平等に扱う12音技法と呼ばれる作曲法への到達を導いたのはこの平均律の「均質性」によるものとも言える。また一方で20世紀の現代音楽の発展は、クラスターや、微分音の導入(平均律の半音をさらに等分し細分化する)にみられるような新たな音響的追求に特徴づけられる方向性もあるが、この音楽的に緊張感の高い音響(あるいはノイズ)への渇望感は、平均律の「均質性」に対する一つの補完欲求だったといえるのではないか。
 
 アメリカの作曲家ハリー・パーチ(1901~1976)はそんな中、純正調の拡張と身体性という観点から独自の音律を創作していった。その後、純正調などによる音律への注意深い配慮から優美なメロディを生み出したルー・ハリソン(1917~2003)、ドローンから純正の響きを思考したラ・モンテ・ヤング(1935~)、ヤングの結成した「永久音楽劇場」のメンバーでもあったテリー・ライリー(1935~)は純正調に基づく独自の即興演奏を続ける。など、主に70年代前後のアメリカの新たな音律の実験等が紹介され、興味深い実践の一部を垣間みることができる。

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[感想]
 音律の差異は、音楽における個性の差異ともなる。
グローバリズムが突き進み、均質化する現代社会を経験している私たちの今奏でるべき音律とは何か。

Posted by shimaf at 23時58分   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

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